第28回 西高の夕べ
西高の夕べのご案内です。概要についてはポスターをご覧ください。 |
■第1部 講演 水野紀子氏 (都立西高25期)
テーマ「日本の家族を考える ~『虎に翼』と民法~」
■水野紀子さんのプロフィール
1974年西高等学校卒業後、東京大学法学部卒業。東京大学法学部助手、名古屋大学法学部助教授・教授、東北大学法学部教授を経て、2020年から東北大学名誉教授・白鷗大学法学部教授(現在に至る)。加藤一郎教授に師事し、専攻は、民法・家族法。加藤教授については、エッセイ「恩師を語る」学士会会報45号(2012年)https://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/katou.pdfを参照されたい。夫婦別氏選択制等を提案する1996年婚姻法改正要綱を策定した法制審議会民法部会身分法小委員会をはじめ、離婚後共同親権等を提案する2024年家族法制の見直しに関する要綱を策定した法制審議会家族法制部会に至るまで、成年後見法・成人年齢法・特別養子法・相続法・実親子法などの家族法領域の民法改正を審議する法制審議会各種部会に参加した。その他、臓器移植委員会委員など、政府の審議会委員を多く務める。業績一覧は、https://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/を参照。
■水野紀子さんからのメッセージ
NHK朝ドラ「虎に翼」の主人公「寅ちゃん」は、日本初の女性法曹であった三淵嘉子さんがモデルである。三淵さんより40歳ほど年下の私は、若い頃に出席した学会で生前の三淵さんをおみかけしたことがある。「寅ちゃん」が法学を勉強するきっかけは、民法が定める妻の行為無能力を知ったからであった。
当時の民法、明治民法が施行されたのは、明治維新から30年後の1898年であったが、30年後とはいえ、権利や義務や時効という言葉そのものを創り出すところから始まった法典継受作業は、突貫工事の早業であった。三淵さんの司法試験合格は、民法施行から40年後の1938年である。「虎に翼」が描いたように、その後の日本は1945年の敗戦に向けて苛酷な数年を経る。そして日本国憲法が定めた平等則に合致するように、民法の家族法部分は、大改正されて「家」制度を廃止した。
今の西高生にとっては、すべて大昔の歴史上のできごとであるのだろう。しかし前期高齢者となった私には、すべて地続きの、慌ただしい圧縮された日本近代化のできごとのように思われる。そして民法が規律対象とする日本の家族は、戦後、大きくその姿を変えた。20世紀の初めからほとんど増減しなかった農業人口は、1960年頃から急速に減少してサラリーマン社会が到来した。夫婦別姓が求められ、生殖補助医療が進展して実親子法も改正を迫られ、最近は同性婚立法を求める動きがある。市民の共存のルールである民法は、家族をどのように規律するのだろうか。
■水野紀子さんのプロフィール
1974年西高等学校卒業後、東京大学法学部卒業。東京大学法学部助手、名古屋大学法学部助教授・教授、東北大学法学部教授を経て、2020年から東北大学名誉教授・白鷗大学法学部教授(現在に至る)。加藤一郎教授に師事し、専攻は、民法・家族法。加藤教授については、エッセイ「恩師を語る」学士会会報45号(2012年)https://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/katou.pdfを参照されたい。夫婦別氏選択制等を提案する1996年婚姻法改正要綱を策定した法制審議会民法部会身分法小委員会をはじめ、離婚後共同親権等を提案する2024年家族法制の見直しに関する要綱を策定した法制審議会家族法制部会に至るまで、成年後見法・成人年齢法・特別養子法・相続法・実親子法などの家族法領域の民法改正を審議する法制審議会各種部会に参加した。その他、臓器移植委員会委員など、政府の審議会委員を多く務める。業績一覧は、https://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/を参照。■水野紀子さんからのメッセージ
NHK朝ドラ「虎に翼」の主人公「寅ちゃん」は、日本初の女性法曹であった三淵嘉子さんがモデルである。三淵さんより40歳ほど年下の私は、若い頃に出席した学会で生前の三淵さんをおみかけしたことがある。「寅ちゃん」が法学を勉強するきっかけは、民法が定める妻の行為無能力を知ったからであった。 当時の民法、明治民法が施行されたのは、明治維新から30年後の1898年であったが、30年後とはいえ、権利や義務や時効という言葉そのものを創り出すところから始まった法典継受作業は、突貫工事の早業であった。三淵さんの司法試験合格は、民法施行から40年後の1938年である。「虎に翼」が描いたように、その後の日本は1945年の敗戦に向けて苛酷な数年を経る。そして日本国憲法が定めた平等則に合致するように、民法の家族法部分は、大改正されて「家」制度を廃止した。今の西高生にとっては、すべて大昔の歴史上のできごとであるのだろう。しかし前期高齢者となった私には、すべて地続きの、慌ただしい圧縮された日本近代化のできごとのように思われる。そして民法が規律対象とする日本の家族は、戦後、大きくその姿を変えた。20世紀の初めからほとんど増減しなかった農業人口は、1960年頃から急速に減少してサラリーマン社会が到来した。夫婦別姓が求められ、生殖補助医療が進展して実親子法も改正を迫られ、最近は同性婚立法を求める動きがある。市民の共存のルールである民法は、家族をどのように規律するのだろうか。